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#04 組織(論)を本気で考え続ける
~個性を発揮し、調和する~

  • インタビュー 2025年1月14日
  • 日本テクノロジーソリューション株式会社  
    岡田 耕治氏
#04 組織(論)を本気で考え続ける~個性を発揮し、調和する~

革新的な技術や製品を作り、世に送り出すだけでなく、他の企業と事業を共創し、メディアとして情報発信もする。製造業という枠にとどまらない多様な事業を生み出し新しい時代を創る、それが日本テクノロジーソリューション株式会社である。

 

社員がそれぞれの個性を発揮しながら挑戦し活躍することで、組織としてはかえって調和していく。企業にとっての「挑戦」である新規事業でも、鍵となるのは強いWILL、つまり「本気」だ。代表取締役社長の岡田耕治氏インタビュー最終回は、教科書にない挑戦し続ける組織(論)の本質に迫る。

目次
  1. 挑み続ける組織(論)
  2. 透明を放つ
  3. 千三つは嘘。本気でやる人を三人探せ

1. 挑み続ける組織(論)

以前、入社2年目の弊社社員がTEDxKobeのボランティアに行った際、その代表の方が私に会いたいと仰っている、と伝えてきました。こうした外部の組織に所属して、社長である私とやり取りさせようとする、その社員の気概はすごいと思いましたね。その代表の方とは実際にお会いして、何か一緒にできることがあればこちらも協力するという話にはなりましたが、何よりこれをコーディネートしているのが入社2年目の社員というのは、社内文化が非常に浸透していると思いました。

 

なぜその社員の方がそうした話を気軽にできたのか。貴社内でそうした空気や文化があるのでしょうか。振り返って、何かきっかけはありますか。

 

コロナ禍以前でしたが、外部から見たらとてもいい会社と言われていました。実際に新・ダイバーシティ経営企業100選といった賞も頂いていたのですが、それにもかかわらず、ずいぶんと人が辞めてしまった年がありました。ちょうど当時は新しい社屋を建てた頃で、俗に言う組織化や効率化の動き、システマチックに経営活動を進めないといけない、といった空気感が社内にありました。組織作りでも、トップが直に物を言うのではなく、ちゃんと組織図どおり段階を踏みましょう、といった感じになりかけたときが一瞬ありました。

 

そこで気が付いたのは、「Here & Nowで、私たちは小さな組織からこそできる、上意下達ではなくダイレクトにコミュニケーションするスタイルがある」ということです。それならばいっそ、組織論を開発してやろう、と思いました。既存の組織論に囚われて動くよりも、自らが開発をし、一番良い組織体、理想の組織を開発したいと思い、今もそれを続けています。日々トライアンドエラーですね。

 

例えば入社1年目の社員と私で、週に1回話す時間を設けています。それはコロナ禍で時間ができたことにより始めたのですが、結果としてはやって良かった。例えば、ちょっと元気がないように見えた社員も、直接話してみたら実はそうでもなかったということもありました。誤解したままで悶々と考えるのは時間の無駄ですから、おかしいと思うことがあれば直接言うように伝えています。これによって「心理的安全性が非常に高くなる」という効果が間違いなく出てくる。とにかくやりながら実際にどういった組織が理想なのかを考え、組み立てていきたいと思っています。

 

ベテランの社員の方が海外協力隊へチャレンジしたいとおっしゃったのだとか。それに対しても、会社の組織制度を変えたそうですね。

 

そうですね。ある時、ベテランの社員の方が突然「会社を辞めたい」と言って、辞表を持ってきたのです。「55歳になったら海外協力隊をやろうと思っていました。会社を辞めて応募します」と。体重制限などの健康管理はもちろん、英語力も求められる一方で、本人は全く英語が話せない。それでもチャレンジしようとするわけですよ。

この話を聞いたときに、弊社のような若い集団の中でベテランの大人が実践していく姿は、他の社員にとっても非常に勉強になると思いました。一方で新しいチャレンジに費やす時間が増えるため、マネジメントに携われる時間は少なくなります。このベテラン社員の新しい挑戦を応援するためにも、別枠としてプロフェッショナル制度を急いで設けました。普段のミーティングやマネジメント業務からは一切外し、技術顧問のような形で相談しています。この形でうまくいくのか、「まずはやりながら考えていこう」ということで進めています。

 

若手への投資やチャレンジ支援はよくありますが、ベテランへの支援は珍しいですね。彼ら自身の夢があったとしても、会社としては業務で活躍してもらいたいし、マネジメントもお願いしたい。しかし会社の都合を取り払った上で外に出ることを支援するというのは、一見すると貴社の利益にならないですよね。

 

それは本人も言っていました。会社には何のメリットもないですよ、と。しかし私はメリットがあると思っています。例えば(海外協力隊の様子などを)毎日YouTubeで発信したら、それなりに見る人もいるでしょうし、社員のアピールにもなりますので。

あとは私自身、「若い人だから~」「ベテランだから~」といった世代論が嫌いです。年寄りは引っ込まないといけない、といった論調もおかしいと思っています。

 

様々なことを真剣に考えられて、組織作りや新しい取り組みをされている。やはりそうしないと上手くいかないとお考えでしょうか。

 

もちろん、他社で上手くいった方法が自社でも上手くいくとは限りませんが、それでも共通項は必ずあると思います。それでいうとコンサルタント会社にいた者として、組織・人材開発については、何か実践して得たものを世に出して、広くお役に立ちたいと思います。

 

お話ししていて、社長はコンサル出身だと節々で感じます。偶然に今の組織になったのではなくて、ちゃんとデザインされているのが伝わります。ただ、会社の規模が大きかったり事業が悪化したりすると、組織が階層型になったり、レポートラインを取ったりといった組織になりやすいですよね。

 

階層型の組織やレポートラインを取ることも大切で、組織として成立させていることはすごいと思います。ただ、私たちがそれを真似しても、単に普通の会社になるだけで面白くありません。

 

2. 透明を放つ

貴社のパーパスとともに紹介され、エントランスにも飾られている「色彩が透明を放つ場所」という絵は、ワークショップにて社員の皆様と描かれたのですね。新しい事業を立ち上げたり、コラボレーションができたり、また非常に自律的な組織づくりをされたりしている貴社を象徴する絵だと思いました。

 

この絵では、社員それぞれ好きなように描いたモチーフが組み合わせられている。よく見るとさまざまなタッチ・色彩で描かれているが、違和感なく調和している。

 

絵のタイトルに「透明を放つ」という表現がありますが、ここでの「透明」とはエネルギーと捉えています。「見えないけれどすごい」と思われるところまでいくには、究極に色彩を作らないといけませんからね。

ワークショップを主催する画家の池平徹兵さんより、彼の作品「色彩が透明に帰る場所」についてのお話を伺った際、「最初から上手く描こうとか、調和させようと思って描くと、全く調和しない」とおっしゃったのです。

これはビジネスに置き換えても、全くその通りだと思いました。調和を前提に物事を考えていくと、単なる仲良し集団を作ることになってしまいます。そうではなく、一人ひとりがそれぞれ懸命に取り組むことによって、勝手に調和するのだと。この考え方にいたく共感しました。

 

新規事業やコラボレーションを考える際、企画を叩けば叩くほどつまらなくなることが多い一方で、貴社の成長と池平さんの「透明に帰る※」という表現は通ずるところが大きいのではないでしょうか。とはいえ、このバランスが難しく、経営にとって一番重要なところであり、会社のアイデンティティになるのでしょうね。

※「透明に帰る」:個性を発揮していても周りを引き立て、外から見えなくなるのではなく自身も主役になる状態

 

文化の話に戻りますが、すりあわせ技術やアナログ技術は絶対残すべきだと思います。それは企業体でも同じです。デジタル化を進める中でも、全てをデジタルに任せると、どの企業も同質化してしまいますよね。AIに完敗し、人間の尊厳など全くなくなってしまうかもしれません。

世の中には優れたサービスがたくさんありますので、どんどんシステマチックになっていくとは思います。もちろん私たちも導入していますが、根幹にある魂まで売ってしまうことだけは絶対に避けたい。このバランスをどのように取るかが重要だと思います。

 

「人間は比較し自分で自分を苦しめる癖を持っているが、動物は自身がなれないものになろうとすることなく生きる」という、貴社のZoo Projectにも表れていますよね。

一般的に、「自主性」や「自律性」といった言葉を理解していても実践できない背景には、何か不自然なやり方をしようとしているのだろうと思います。それに対し、皆さんが自然と活躍できる、というのが組織の完成形だと思いますが、まさに貴社ではそれが体現されているように見受けられます。

 

「自分は自然体で何もしなくても、周りが疲れ果てて戦いをやめる」という、まさに「木鶏」が一番強い状態だと思います。そして、そのような自然体になるための舞台を用意し、状況を作ることが、私の仕事だと思います。

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