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#03 マーケットの視点でセグメント管理体系を刷新、人財戦略とМ&A・協業で事業を育てる

  • インタビュー 2022年4月12日
  • 横河電機株式会社 代表取締役社長  
    奈良 寿氏
#03 マーケットの視点でセグメント管理体系を刷新、人財戦略とМ&A・協業で事業を育てる

計測・制御機器メーカーの国内最大手である横河電機株式会社 代表取締役社長 奈良 寿(なら ひとし)氏に、社会課題の解決を通じて成長していくための組織改革、およびMAなどの活用による事業活性化の取り組みについてお伺いしました。

目次
  1. 基本戦略として、「業種対応力の強化と非業種依存のビジネス拡大」という方向性が掲げられています。従来の領域と非業種依存の新しい領域とを共に強化するために、どのような工夫をしていますか。
  2. 新事業を活性化するために、取り組んでいることはありますか。
  3. M&Aや異業種とのパートナーシップにも積極的ですが、今後連携していきたい分野はどこですか。

1. 基本戦略として、「業種対応力の強化と非業種依存のビジネス拡大」という方向性が掲げられています。従来の領域と非業種依存の新しい領域とを共に強化するために、どのような工夫をしていますか。

 事業環境の変化に適応し、社会共通の課題の解決を通じて成長していくため、まず手を付けたのが売上の9割を占める主力の制御事業における事業セグメントの変更です。これまで、製品やソリューションの軸で事業を展開し、売上の9割は制御事業が占めていましたが、これをエネルギー&サステナビリティ事業、マテリアル事業、ライフ事業の三つのサブセグメントに分割しました。マーケットの軸を取り入れたということです。

 

 先に述べたとおり(本シリーズの#01を参照)、横河電機のコンピタンスを突き詰めると、「計測して、制御して、それらの情報を束ねて価値のあるものにする」といったことになります。これは社会、産業のみならず人の営みの基本となり、本来はいろいろな社会貢献にもつなげられる要素です。従って、さまざまな産業の生産活動に本来貢献できるはずですが、それらを一つの事業としてマネジメントしてしまうと、オイル&ガスのように規模の大きいマーケットにリソースが自然と偏りがちです。

 

 日本では多様な業種で事業を展開していますが、海外でもオイル&ガス以外のさまざまな分野で事業を拡大していくために、グローバルで3つのサブセグメントを軸とした体制を構築しました。また、ライフ事業は新規事業ですので既存事業と違うマネジメントを行えるようにしました。既存事業を強くしながら新しい事業を創り育てることを一つの企業の中で両立する経営は、「両利きの経営」もしくは「2階建ての経営」と一般的に言われますが、新規事業に対しては既存事業と同じマネジメントをせず、それぞれの事業に適したマネジメントを適用できるように体制の変革に取り組みました。

 

 既存事業はビジネス効率を高めならば事業拡大を進めます。事業拡大には、生産現場から上位の経営システムに拡大して価値を提供していく方向性と、一つの企業にとどまらずサプライチェーン全体に価値提供の場を広げていく方向性があります。事業セグメントを分ければ、注力業種でバランスの取れた展開が可能になります。新たな軸として定めたエネルギー&サステナビリティ、マテリアル、ライフの3セグメントに、測定器事業と新事業を加えて、五つのセグメントで事業経営をしていくことを目指しています。

 

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2. 新事業を活性化するために、取り組んでいることはありますか。

 新事業は、対象となる業種の知見を蓄積する必要があり、やみくもに領域を広げて拡大することはできません。また、ビジネスモデルのトレンドは、モノの購買ではなく、受けるサービスに対して継続的に対価を払うというリカーリングにシフトしています。事業やビジネスモデルのあり方が変わるときには、その変化に対応できる人財が必要です。まずは人を育て、従来事業から新事業に人財を配置転換し、キャリア採用で補強するといった調整をしています。

 

 ただ、社内で同じような業務を長く続けていた社員のマインドや行動様式を変えるのは簡単ではありません。新分野ではキャリア採用した人財が大きな力を発揮しています。社員のマインドチェンジのためにも、外からの刺激を受けるのは効果的です。

 また、既存事業と新事業では異なる管理基準を採用しています。既存事業では内部収益率を高めの基準で評価しますが、新事業は短期的な判断によらない制度としています。

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