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#03 新しい形のシナリオプランニングから生まれた「2035年未来シナリオ」

#03 新しい形のシナリオプランニングから生まれた「2035年未来シナリオ」

「将来のリーダー・エキスパート育成」「持続的なネットワーク構築」「未来シナリオの策定」という三つをゴールとして設定した「Project Lotus」から始まった横河電機が取り組む「未来共創イニシアチブ」プロジェクト。その軸となるのはプロジェクトで作成された「2035年未来シナリオ」。今回は、「2035年未来シナリオ」がどのような過程を経て形づくられていったのかを、プロジェクトリーダーである横河電機の玉木伸之氏から伺います。

目次
  1. このプロジェクトで活用したシナリオプランニングとは、どのような手法なのでしょうか。
  2. どのような過程を経て未来シナリオは策定されたのでしょうか。
  3. 策定された未来シナリオはどのようなものでしょうか。
  4. できあがった「2035年未来シナリオ」は、どのように活用しているのでしょうか。

1. このプロジェクトで活用したシナリオプランニングとは、どのような手法なのでしょうか。

シナリオプランニングは、起こり得る複数の未来をシナリオとして策定し、それらの未来を念頭におきながら将来の機会やリスクに対する適応策を考える思考法です。ビジネスの世界では、1970年初期にロイヤル・ダッチ・シェル社が活用し、石油メジャーの中でシェルのみがオイルショックを切り抜けた事例が有名です。一般的な未来予測(フォアキャスティング)が、過去のトレンドや現在のケイパビリティを起点に単一の未来を展望するのに対し、シナリオプランニングでは未来の不確実性を積極的に評価し”起こり得る複数の未来シナリオ”を描き、未来を起点にバックキャスティングして現在をみる手法です。

 

一般的なシナリオプランニングでは、シニアの経営幹部や社外のコンサルタントが中心となって、戦略立案を目的として実施します。今回の私たちの2035年未来シナリオ策定では、将来のリーダー人財育成を目的に、将来を担う20代半ばから40代前半の若手社員が中心となって、シナリオプランニングの計画から実行までの全てのプロセスを社外のコンサルタントに頼らず自前で実施しました。メンバーが自ら考え、チームで議論・学習することで、未来で活躍する人をつくりたかったということと、社内外のステークホルダーとのオープンな対話を通して共創的なネットワークを構築し、また、社外の各分野のリーダーや有識者とさまざまな社会課題についてニュートラルに議論していることも大きな特徴です。

2. どのような過程を経て未来シナリオは策定されたのでしょうか。

 

20代半ばから40代前半の若手社員が中心となっての策定ですから、もちろん簡単ではありませんでした。大きな工程としては「外部環境分析」「不確実性評価」「シナリオ作成」「シナリオ検証」という四つのSTEPを踏みました。

まず外部環境分析では、インプットとして69冊のさまざまな書籍を順次課題図書として設定。また複数の専門リポートの読み込み、事業部長や役員ともディスカッションをしました。加えてシナリオプランニングのトレーニング、ワークショップや、外部からの専門的な視点を盛り込むべく、未来予測の専門家、お客さま、ビジネスパートナー、グローバルリサーチ会社といった、外部パートナーとの議論も重ねました。また、未来を考えるために必要な多様な思考方法(システム思考、統合思考、デザイン/アート思考など)とメタ認知力を身につけるために個々人のスキルアップにも時間を費やしました。

 

未来を描くためのDriving Force(重要変化要因)を約2,400項目洗い出し、議論を重ねて、最終的には11のメガトレンドと将来を左右する「分かれ道」となるような不確実な変化要因46項目を洗い出しました。

 

次の「不確実性評価」では、仮説を立て社内外の有識者との議論を重ね、変化ドライバーをクラスタリングし、当社の未来を左右する重要な不確実性として、「デジタル基盤の構築」「グリーン経済のパラダイム」という二つのシナリオの軸を導出しました。

「シナリオ作成」の工程では、少数の意見を尊重し、社内外の有識者との対話や追加調査をもとに仮説検証を繰り返しました。また、ドラフト段階では社内の関係役員たちと一人2〜3時間の個別会議を開き、段階的に意見を統合していきました。シナリオ作成のポイントとなるのは、高い視座で世界を俯瞰(ふかん)し、問いを続け、妄想することです。

今回のシナリオ作成で他とは異なる大きな特徴は、20代半ばから40代前半の若手によって作成された点と、外部の有識者たちと度重なる議論を交わしてきたことです。社外の経営者や有識者との対話を通して将来の新たな事業機会を議論してきたことで、自社の事業戦略を目的としたシナリオにとどまることなく、社内外の全てのステークホルダーと共に未来を共創し、新しい時代の世界観を示すシナリオをつくり出すことができたと考えています。

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