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#04 サステナビリティの出発点は人財育成である

#04 サステナビリティの出発点は人財育成である

「2035年未来シナリオ」を起点に、横河電機は2050年の未来を見据えて動いています。4回目となる今回は、未来シナリオのその後と「未来共創イニシアチブ」について、プロジェクトリーダーである横河電機の玉木伸之氏にお話を伺います。

目次
  1. 「2035年未来シナリオ」によってもたらされた社内の変化をお聞かせください。
  2. 未来共創イニシアチブ発足後の活動によって、どのような発展がありましたか?
  3. 未来志向の共創人財育成のプログラムとして立ち上げたプロジェクトとのことですが、未来志向の共創人財を育てるために必要なことはなんだと思いますか。
  4. 最後に読者の方に向けて一言お願いします。

1. 「2035年未来シナリオ」によってもたらされた社内の変化をお聞かせください。

未来シナリオを作成したことで、横河電機の社内でもさまざまな部門でシナリオを活かす動きが出てきています。例えば、経営企画機能を担うマーケティング部門では、中期経営計画策定時の10年後に想定される外部環境の変化を洗い出すために、未来シナリオのグローバルトレンドや業界トレンドなどの外部環境分析の結果を参考にしました。さらに、社外のお客さまの経営部門や有識者との対話にも適宜同席してもらい、社外では実際に長期的な外部環境変化をどのようにとらえているのかという知見にダイレクトにふれる機会をつくりました。また、新たに作成された「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」という横河電機のパーパスにおいても、先駆けとなる世界観として未来シナリオをベースに将来の事業環境変化や新たに獲得すべき強みについて議論し、パーパス制定の方向性を示唆しました。

 
また、未来共創イニシアチブの活動が深化と探索の両立を重視する両利きの経営における新たな探索機能の位置づけにもなっています。
営業でも変化が起きています。これまで「答えは現場にある」というスタンスで現場志向の課題解決を行うのが一般的でした。しかし、シナリオをもとに外部環境について社外の経営層と対話する機会が増えて、外部環境変化にともなう異業種を含むエコシステム構築やサプライチェーンの見直し、将来の事業や技術開発エリアの意見交換など、経営全般から業界再編や社会課題の話題まで、高い視座で長期的な社会全体のシステム構造変化や価値創造について議論を深めています。 


その他の社内部門における変化を挙げると、プロジェクトに参加した若手社員が新人から入社数年目の20代の社員の育成、技術開発部門や新規事業開発部門の長期戦略の立案を主導するなど、社内全体に広がりを見せています。また、プロジェクトメンバーの主体的に学ぶ姿勢や収集情報が、社員全体のアンラーニングやリスキリングにも寄与しています。

 

2. 未来共創イニシアチブ発足後の活動によって、どのような発展がありましたか?

未来共創イニシアチブは、2021年4月に横河電機の社長直轄の組織横断バーチャルチームとして発足し、20代半ばから40代前半のミレニアル世代の社員23名が活動しています。これまでに作成してきた2035年未来シナリオを、世代や業界の垣根を超えた未来の世界観の対話ツールとして活用し、これまで90法人を超える経営者や有識者と世界観を共有しています。

 

また、大きな発展の一つが、早稲田大学のガバナンス&サステナビリティ研究所と共同で“Green Phoenix Project”が創設されたことです。現在30の企業・団体が参加し産官学融合のラーニングコミュニティーによるオープンイノベーションを目指しています。ここに参加する企業からは、業界の未来シナリオを議論するためにも同業種の競合にも参加してもらいたいという声があがるなど、社会課題の解決のために共創を求める意識が広がっています。

 

何かを発信し続けると必ずフィードバックがある。ポジティブな反応もあれば、ネガティブな反応もあり、対話を通して多くの気づきと学びを得ることで、新たな何かを始める機会にもつながります。短期的な収益や利害が起点にあると、このような行動はとれません。しかし、未来志向で長期的な価値共創に向けて探索的な対話と行動をとることに意義を見いだし、それをやり続けようというのが、この未来共創イニシアチブを立ち上げた一番大きな思いです。企業経営において長期的な仕込みを行う活動には、経営者はもちろん、事業部門・コーポレート部門・海外拠点など全部門の協力を仰ぐことが重要です。そこで社長にお願いをして、本活動を社長直轄チームとして立ち上げました。また、メンバー全員を本業との兼務としたのは、既存組織へ長期視点や社外のトレンド情報を流通させるパイプ役になってもらいつつ、本業においても未来志向の変革を担う役割を持ってほしかったからです。そして、企業の成長においては、既存の組織が持つナレッジやスキルを活用することは共創活動を推進するうえで不可欠だからです。

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