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#05 日本製造業のゲームチェンジに必要な「経営者力」

  • インタビュー 2023年8月 9日
  • 株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEO  
    井上 和幸氏
#05 日本製造業のゲームチェンジに必要な「経営者力」

新卒以来、リクルートや採用系スタートアップの役員としてのご経験から、ご自身の「志」の下に社会に変革をもたらす経営者・リーダーをプロデュースする経営者JPを創業された株式会社 経営者JPの代表取締役社長・CEO 井上和幸様に、今の製造業が直面する課題を解決するリーダー人材・組織づくりについてお話を伺いました。

今回は経営者JPで定義する、リーダーに求められる5つの力についてお話を伺いました。この5つの力、時と場合によって使いこなせているでしょうか。特に日本製造業はその組織の構造上、意識的にリーダー自身が自らの「力」をアップデートする必要がありそうです。

目次
  1. 「経営者力」~リーダーに必要な、5つの普遍的な力~
  2. レイヤーごとに変わる リーダーに求められる「力」
  3. 経営人材に必要な、描く力・決める力とは

1. 「経営者力」~リーダーに必要な、5つの普遍的な力~

これからの時代に求められるリーダーに共通して必要なスキルは何でしょうか。

 

弊社は2021年秋に、「経営者力診断」を独自に開発してリリースしました。経営者力、つまり「経営者やマネジメントの方々はどういう共通的な力を発揮していただく必要があるのか」を、弊社なりにいろいろなデータサンプルなどを元に解析し開発しました。

 

この結果、5つの要素が重要だと考えています。それぞれ平易な言葉で表現しており、まず①描く力(構想力)、②決める力(決断力)、③やり切る力(遂行力)、そして④まとめる力(リーダーシップ力)、最後に⑤学び続ける力(習慣化力・学習力)5つです。

特に①描く力・②決める力・③遂行する力が一番コアな3つの力で、それを拡大生産、レバレッジさせる因子として④リーダーシップがあり、一番外側に持ってきているのが⑤学び続ける力です。この考え方は今のところ恐らく、かなり普遍性があると考えており、経営者やリーダーとなる方にはこの5つの力を高いレベルで発揮いただけることが望ましいです。

 

 

また、皆さまそれぞれ、例えばマーケティングやデジタルの経験者という側面もあるかと思いますが、そうした専門力をしっかり発揮するためにも必要になります。さらにこの5つの力は、企業を取り巻く変化の大小に関係なく、いわゆる組織型のリーダーとしてやっていくならば、今のところ共通して必須な力だと思います。

2. レイヤーごとに変わる リーダーに求められる「力」

では、例えば時代の変化によって同じ描く力でもスコープが変わる、同じまとめる力でも社内ではなく社外の人をまとめる、といったように、それぞれの軸の中で特徴的な変化がありましたら教えてください。

 

経営者力診断では対象者のレイヤーごとの特徴も見ています。弊社では幹部人材と経営人材という言葉を使っており、幹部人材は一般的にいう課長・部長などいわゆる中間管理職、一方の経営人材は一般的にいうと執行役員や取締役社長を指します。

 

そしてこのレイヤーで見た結果として興味深い点がいくつかありました。まずは共通点として、⑤学び続ける力はポジション・レイヤーに関係なく大事であることが分かりました。この力のある方は、どのレイヤーにいる方でもかなり活躍されています。

一方、その他の4つの力は、先ほどの幹部人材と経営人材でメリハリがあることも分かりました。

 

まず中間管理職である幹部人材でいいますと、③遂行する力と④リーダーシップ力が一番強く求められます。会社のなにがしから名を受けて組織を率いていく、それをちゃんと実行して結果を出すところを任されているのが部長・課長なので、こうした2つの力が非常に求められます。そしてちゃんと機能できている方に関しては、この2つの力を一定以上持っているマネジメントの方が多いです。

 

問題は経営人材の方々も、わりと③遂行する力と④リーダーシップ力に偏っていることです。経営力診断で定義する経営人材に必要な力は①描く力と②決める力であり、こうした人材こそ、今まさに強く求められていると思います

この①描く力と②決める力が弱いトップマネジメントの方が、失礼ながら大手の方に多いです。

例えば製造業の幹部人材として優秀で、そこで愚直に真面目に仕事をして昇進昇格を重ね、役員や取締役などになります。オーナー企業であれば問題ないかもしれませんが、今は社長が言ったことをやっていればいい時代ではありません。本来は各部のトップがいろいろな状況を察知してタフな判断をしていくべきで、実際そうした方が活躍しているかと思います。

しかし日本人全般で大きく見ると、管理職の中でも上位の方が発揮しているのが、メンバーを鼓舞したりまとめたり面倒を見たり…といったリーダーシップです。たしかに得意な方も多く、一定以上の力を持っている方も少なからずいます。こうした方がそのまま経営層へ上がってしまいますが、そのレイヤーで本来発揮するべき力は、変化する局面の中において大きな意味での状況をつかんでいくことです。

ゲームチェンジやパラダイムチェンジを進めていかなくてはならない環境で、幹部人材の方がそのままのスキルセットで経営人材となってしまうと、企業のマネジメント自体が変革しません。こうした階段を上るときにリーダー自身が変わっていかなくてはならず、そのために必要となるのが⑤学び続ける力といえるかもしれませんね。自ら学び、自らを変えられる人は、うまく幹部的なスキルから経営者的なスキルにアップデートできるかと思います。

 

それでも、特に大企業においては、過去の経験に引っ張られて変わりづらいという大きな問題があるのでしょうか。

 

成功体験というのは全部捨てる必要はなくて、大事なところもありますし、無駄を省けるといった意味では良い面もあると思います。ただしそれまではそれで問題なかったけれど、それが通用しなくなる、といったことが頻繁に起こります。特に優秀な幹部層のリーダーの方こそ、気をつけていただきたいポイントです。

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