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#01 新しい社会経済に対応できる将来のリーダー候補育成

#01 新しい社会経済に対応できる将来のリーダー候補育成

人口減少やエネルギーシフト、技術革新など、社会環境が大きく変化しています。それに伴って企業は、デジタルトランスフォーメーションやサステナブルな経営といった命題に取り組まなければなりません。このようなVUCAと言われる混迷の時代、これからの企業経営はどうあるべきなのでしょうか。今回は、プラントの計測・制御機器など「産業のマザーツール」を提供し、石油・ガス、再エネ、電力、素材・化学、モビリティ、食品・薬品といった分野において、社会インフラを支えるべく事業展開している横河電機が取り組む「未来共創イニシアチブ」という社長直轄の組織横断バーチャルチーム、またその過程でつくられた「2035年未来シナリオ」について、プロジェクトリーダーである横河電機の玉木伸之氏にお話を伺います。

「未来共創イニシアチブ」が立ち上げられた背景について教えてください。

私は、新入社員として横河電機に入社以来、システム設計/構築、開発、商品企画、グローバルマーケティング、新事業企画、経営企画など多様な部門を経験してきました。入社当初は、半導体や医薬品工場向けFA(Factory Automation)分野のビジネスに携わっており、MES(Manufacturing Execution System)と呼ばれる工場の生産管理システムの構築・開発をしていました。そのビジネス市場の中で、特に半導体や医薬品などの分野では早い時期より生産システムの“情報化”が進み、工場でいかにITを活用しビジネス効率を上げるかという “IT”の時代が急速に進んできていました。そのような時代背景の中で“IT”に関わるいくつかの新事業立ち上げに関わり、その後、全事業の戦略や中長期計画を立案する経営企画部門を経て、主力の制御事業(Industrial Automation)のグローバル業種マーケティング部門に異動し、エネルギーや化学業種向けの戦略立案や、事業ブランディング、エグゼクティブセリングや事業変革を推進するグローバル組織横断プロジェクトの企画・推進をリードしてきました。また、経営企画部門で「シナリオプランニング」をはじめて企画・実施して以来、10数年、社外でも毎年のように「シナリオプランニング」を実施するようになりました。

 

横河電機は計測・制御・情報に関するソリューションを中心に産業のマザーツールを提供する会社であり、BtoB製造業のお客さまの黒子的な役割を担い、社会や産業を支えています。BtoC企業のお客さまも多くいらっしゃいますが、現在はBtoB企業のお客さまが多く、分野的には石油・ガス、石油化学、再生可能エネルギー、電力のようなエネルギー分野の重厚長大なプラント、また化学、バイオ鉄・非鉄、電機・電子のようなマテリアル分野、さらには食品、医薬品、安全な水の供給から、最近ではライフサイエンスのような人の健康に関わる分野のお客さまもいます。どの分野も社会や産業にとって非常に重要であり、私たちはこのような社会インフラを支える企業であり続けたいと考えております。

このようなビジネスを長年継続してきたことで、弊社は国内屈指の制御関連機器事業となりました。今ではグローバル60カ国以上に展開し、国内海外あわせて約1万8000人の社員が所属しており、売り上げの約70%が海外市場になります。グローバルにビジネスを展開していくと、当然厳しいビジネス環境で生き残るために必要な力をつけていかないといけません。その力の一つとしてこの変化の激しい時代、変わりゆく世界をしっかり理解しておくことが重要です。こういったことも今回とりあげていただいた「未来共創イニシアチブ」につながる背景です。

 

2021年、横河電機では「Yokogawa’s Purpose」を制定しました。「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」というメッセージであり、この“つなぐ”という言葉には、さまざまな産業におけるお客さまとの信頼関係を築き、システムとシステム、企業と企業、産業と産業をつなぎ、さらに価値を共鳴させていくなど、いろんな意味が込められています。「未来共創イニシアチブ」は、「“つなぐ”ことで地球の未来に責任を果たすというパーパスに向けた実践活動の一つである。」と考えています。

 

 

また、Vision statementも「YOKOGAWAは、自律と共生によって持続的な価値を創造し、社会課題の解決をリードしていきます。」と新たにしました。この“リードしていきます”という言葉は、社長の奈良が非常にこだわったところであります。これまではお客さまの要求を真摯(しんし)に受け、しっかり具現化してプロジェクトを完遂し、長期にわたるサポートを行うという、比較的受け身のアプローチが主でした。しかし、変化が激しく正解なきVUCAの時代においては、お客さまのあるべき姿をお客さまと共に探索しながら未来を創造するパートナーになり、社会課題の解決に向けてお客さまをリードできるような存在になっていきたいというのがトップの思いです。この後ご紹介します「未来シナリオ」というものを、次世代を担う若者たちが受け身でなく自ら考え描き、率先して社会課題の解決をリードするような行動を実践していってほしい。そのような思いが「未来共創イニシアチブ」という活動を推進している背景にあります。

 

 

これまでのモノの供給中心であった20世紀型の社会経済システムが終わりを迎え、デジタルやサステナビリティという二つのキーとなるトランスフォーメーションや、新型コロナウイルスの感染拡大、Z世代に見られるような人々の価値観の変化によって、顧客体験やサービスなどの需要中心の新たな社会経済システムに移行していくことが予想されます。現在から2030年頃にかけては、こうしたパラダイムシフトのはざまにあって、個人の価値観の変化や産業再編も進む、分断と混乱の時代と言えます。

 

今後到来するであろう、新しい時代にふさわしい高い俯瞰力と変化適応力を備える人財の育成が必要になる。さらに、その新しい時代においては、一企業や優れた個人があらゆることに対応するのではなく、さまざまなパートナーとの協働・共創が必要になり、そのためのネットワークを構築する力が求められる。そのネットワークを構築するために重要になるのが、私たちが独自の世界観を持っていること。それが、社内外のパートナーとの協働で未来を語り合うのに必要だろうと私は考えました。

 

こうした背景から「各分野で将来を担うリーダー育成」「持続的な社内外のネットワーク構築」「2035年の未来シナリオの策定」という三つをゴールとして設定したプロジェクト「Project Lotus」を2019年に立ち上げました。「Project Lotus」では、シナリオプランニングという手法を用いて、2035年の未来シナリオを策定しながら、各分野で次世代のリーダー候補となる人財の育成に取り組みました。この取り組みが後に「未来共創イニシアチブ」につながっていきます。

 

 

公開済

第2回「答えのない大きな未来を描くための異質・異能たちによる多様なチームづくり

第3回「新しい形のシナリオプランニングから生まれた「2035年未来シナリオ」

プロフィール

玉木伸之(たまき のぶゆき)

横河電機株式会社

未来共創イニシアチブ プロジェクトリーダー

1989年横河電機に入社。半導体や医薬品などのファクトリーオートメーション(FA)分野の生産管理システムの設計・構築、商品企画を経て、新事業開発、中長期経営戦略策定などを経験。その後、エネルギー・化学分野の業種マーケティング戦略立案、エグゼクティブセリングや事業変革を推進するグローバル組織横断プロジェクトの企画・推進をリード。また、社外で多くのシナリオプランニングのファシリテーションを経験。2019年HR部門に移り、シナリオプランニングを活用した次世代リーダー育成プログラムを企画・実施。2021年4月 社長直轄の組織横断の未来共創活動を発足し、社会課題解決や次世代リーダー育成に取り組む。

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