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#02 答えのない大きな未来を描くための異質・異能たちによる多様なチームづくり

#02 答えのない大きな未来を描くための異質・異能たちによる多様なチームづくり

世界はVUCA時代を向かえている。そのような新しい時代のビジネスリーダーやエキスパートを育成するためのプロジェクトが、横河電機が取り組む「未来共創イニシアチブ」の前身となった「Project Lotus」、そのプロジェクトのチームづくりもまた常識にとらわれないものであった。プロジェクト立ち上げ時のお話を「Project Lotus」を企画実行し、「未来共創イニシアチブ」を発足させたプロジェクトリーダーである横河電機の玉木伸之氏に伺います。

目次
  1. 将来のリーダー層を育成するというプロジェクトの中で、メンバーの人選はどのように行ったのでしょうか。
  2. かなり大掛かりなプロジェクトですが、どのように社内でつくり上げていったのでしょうか。

将来のリーダー層を育成するというプロジェクトの中で、メンバーの人選はどのように行ったのでしょうか。

メンバーの人選には非常にこだわりました。ビジョナリーカンパニーの著者ジム・コリンズのいうとおり、「誰をバスに乗せるか」はとても重要です。このプロジェクトの企画、ファシリテーターは私がやると伝え、メンバーもこちらで選ぶことにさせていただきました。ただし各部門からも推薦はしていただきたいとお願いをしました。

私自身も会社生活が長いので、今まで出会ってきた人たちの中で、今回のプロジェクトに関心を示しそうな方に積極的に声を掛けました。各部門からの推薦もあわせて結果的には全部門を網羅する形で候補者が集まり、その中から最終的に面談して人選を行いました。中には適正はあったものの、残念ながら本業との兼ね合いで選考にもれた方も多数いました。

 

選考では考え方がニュートラルな方を選びました。なぜなら、私が人選において大切にした点は、現状組織や事業のメンタルモデルの影響が少ない人、パラダイムが変わる方向を描いて、これからの新しい時代をつくりたいという思いのある人を見つけたいと考えたからです。また、メンバーの多様性を確保するため、意識的にAIのエキスパートやあるサービスのエキスパートなど、各分野のエキスパートを入れ、また、女性比率も高くしました。

 

 

今回やりたいことは、部長や役員を育てるための研修ではありません。そのような経営幹部育成教育は別に用意されています。シナリオプランニングのプロジェクト実施においては、何か専門スキルを持っていて非常に素直である方ならば、既存ビジネスのリーダーにとっての必須スキル、例えばコミュニケーション能力やマネジメントフレームワークの知識だとかは後から身につけることもできるため、現時点で何かが欠けてもいいと考えました。

むしろオタクのように何かを深く追求している人や、異質の考えを持ち組織の中では“変人”である人のほうが望ましいと考え、そのような方を積極的に選びました。変人とは、ユニークな考えをもち、ニュートラルに物事を見て先入観にとらわれない人であり、組織や周囲に迎合的になったり過度に同調することがない人です。選ばれたメンバーは、人によってはかなり違和感を持たれたようです。しかし、今回のようなプロジェクトでは多様性が非常に重要と考えて、異質や異能の人財をそろえました。なぜなら答えのない未来を描くには、そのような異質や異能の人たちが、平均的な思考に陥らず、それぞれいろいろな切り口で多面的に世の中を見なければならないからです。

 

「人は石垣である」というある戦国武将が残した言葉があります。きれいに丸まった画一的な形の石だけでは石垣はつくれない。多様な形の異なる石が組み合わさり、また、そこに小さいけどエッジのたった石が加わることでより強固な石垣をつくることができます。ですから、前述したように既存のリーダー像にとらわれず、多様な人財を選抜しました。未来シナリオを模索する時には、さまざまな視点から世界を見なければなりません。多様な人財がいるからこそ、多様な視点やアイデアをもとにして多様な議論ができる。ですから既存事業の目線、お客さまからの目線、あるいはAIなどのデジタルからの目線といった多様性に加えて、年代や性別といった多様性も意識し、メンバーの人選にはかなりの時間をかけ、各部門のマネージャの協力も得ながらほぼ全ての方と面談し選びました。「こういう方法で未来を描いてみたい」と伝えたときに「やってみたいです」と思いがある人が多くいて、自然と当活動に前向きなメンバーが揃いました。

かなり大掛かりなプロジェクトですが、どのように社内でつくり上げていったのでしょうか。

 

私はもともと経営企画部門にいましたし、これまで組織横断型のプロジェクトをいくつも立ち上げてきた経験がありましたから、時間はかかりましたが、そこまでの苦労はありませんでした。まずは各部門の経営層に、A4二枚の企画書をつくって、協力を仰ぎながら各部門のキーマンを巻き込むところから始めました。経営層に話をする時に大切にしたことは、「Why」を中心にパーパス・ドリブンで物事を語るということです。なぜこのプロジェクトが必要なのか、「What」や「How」ではなく、「Why」が伝わると、共感を得やすいからです。いろいろな人とオープンに対話を重ねて巻き込んでいくと、「新しくパーパスをつくりたいからそれも一緒に検討したらどうか」「将来の産業構造の変化や事業領域拡大を配慮してはどうか」「新たに導入を予定していた組織横断のプロジェクト型目標管理システムをうまく活用しないか」など、各部門で気にはなっていてやりたいけれど、現業に集中するなどのさまざまな事情で進んでいなかった取り組みやアイデアが出てきて、それらをプロジェクトに入れ込んでいくことで経営層の承認を得ることができました。

 

一番難航したのは各部門のミドルマネジャーたちの協力を仰ぐことです。現場の生産性を重視し、厳しい目標達成に向けて動いているミドルマネジャーにとっては、大切な人員のリソースを他にまわす余裕がないためです。プロジェクトを遂行するにあたり、対象となるメンバーの工数の内30%を数か月間くださいとお願いしました。トップがGoを出していても納得していないミドルマネジャーを集めて、プロジェクトの意義や長期的な価値づくりに取り組むことの重要性を丁寧に説明したり、時には一緒にお酒を飲みに行ったりもしました。とにかく相手の立場と意見を尊重し、そのうえでこちらの熱意と覚悟を伝え、敵をつくってはいけないという思いで、トップマネジメント、ミドルマネジメント、本人という三段構えでアプローチしていきました。なぜならば、未来シナリオをつくることは手段であり、各部門で活用し、育った人財が今まで以上に活躍することが目的だからです。始まる前に敵をつくってしまっては未来の扉は開きません。また、未来を考えるうえでは、普段なかなか口にできない組織のネガティブな情報も受け入れながら、より良い未来を目指していく必要があり情報や意見の風通しを良くしておく必要があるからです。

 
そうすることで、各組織の中にはこのプロジェクトの骨子に関わるような多くの種があることがわかりました。本当はやりたいけれども、さまざまな事情でできなくなっている取り組みというのを多く抱えています。時間、コスト、技術、部門の現状ミッションとの乖離(かいり)など、要因はいろいろあります。そういったものは、本質を考えてみると意外につながりがあるものです。それらをうまくつなぎ合わせてみると、実は同じことを言っているということが結構ありました。それを仕組みの中に取り入れながら、共創することによってより良い未来を考えていくということを説きながら巻き込んでいったような形です。いわゆるトップダウンや不健全な根回しのアプローチとは異なり、極めて人間臭く、人の感情や熱意をさらけだしての健全な根回しによるアプローチでした。未来志向のアプローチは、過去のしがらみや現状の制約や組織の壁を越えて、未来を起点に組織や人を連携させることができることに醍醐味(だいごみ)があります。

 

公開済

第1回「新しい社会経済に対応できる将来のリーダー候補育成

第3回「新しい形のシナリオプランニングから生まれた「2035年未来シナリオ」

プロフィール

玉木伸之(たまき のぶゆき)

横河電機株式会社

未来共創イニシアチブ プロジェクトリーダー

1989年横河電機に入社。半導体や医薬品などのファクトリーオートメーション(FA)分野の生産管理システムの設計・構築、商品企画を経て、新事業開発、中長期経営戦略策定などを経験。その後、エネルギー・化学分野の業種マーケティング戦略立案、エグゼクティブセリングや事業変革を推進するグローバル組織横断プロジェクトの企画・推進をリード。また、社外で多くのシナリオプランニングのファシリテーションを経験。2019年HR部門に移り、シナリオプランニングを活用した次世代リーダー育成プログラムを企画・実施。2021年4月 社長直轄の組織横断の未来共創活動を発足し、社会課題解決や次世代リーダー育成に取り組む。

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