Collaborative DX

#02 多種多様な機器をつなげて最適化するインテグレーションの力がSoSの世界観を後押しする

  • インタビュー 2022年3月25日
  • 横河電機株式会社 代表取締役社長  
    奈良 寿氏
#02 多種多様な機器をつなげて最適化するインテグレーションの力がSoSの世界観を後押しする

計測・制御機器メーカーの国内最大手である横河電機株式会社 代表取締役社長 奈良 寿(なら ひとし)氏に、横河電機の掲げる長期経営構想とありたい姿の実現に向けた現在の取り組みについてお伺いしました。

 

長期経営構想では、世界がSoSSystem of Systems)に向けて進む中、横河電機がどのようにアプローチしていくかについて示されています。ポイントを教えてください。

 

SoS(System of Systems)とは、「あらゆるものが複雑につながり、構成要素のそれぞれがシステムとして扱われ、運用の独立性とマネジメントの独立性を保ちながら連携し、単独では実現できない目的をシステム全体として創発的に実現するもの。」という概念です。この世界的なSoSへの流れに対して、「Industrial Automation to Industrial Autonomy(IA2IA)」と「Smart Manufacturing」という二つの側面からアプローチを行おうと考えています。

 

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 「IA2IA」というのは横河電機の造語ですが、インダストリアルオートメーションの自律化を目指していく歩みを呼んでいます。これまでのプラントのオペレーションを自動化するというレベルから、段階を経てオートノミー(自律化)の状態に向かっていくことを表しています。

 

 例えば、プラント運転の自動化にロボティクスやAI、シミュレーターなどのテクノロジーを用途に合わせて取り入れていくと、プラントの設備や操作自体が学習し、処理が最適化され、自ら適応する機能を持つようになります。COVID-19の感染拡大の影響で、プラントをリモートで管理する必要に迫られたこともあり、「IA2IA」への道のりは大きく前進したように感じます。と言うのも、保全のための作業員をなるべく現場に出さずにプラントの設備管理を行うこと、人の安全を高いレベルで確保しながら、生産活動とプラント操業を継続することに対する需要が高まり、多くの企業において、検討が進んだためです。プラントの自律化への強い期待に応えるためにも、私たちが提供してきたインダストリアルオートメーションのテクノロジーに、自律化のための最新の要素技術を組み込んで提供していくことが必要です。

 

 「Smart Manufacturing」は、生産現場からグローバルに立地するプラント全体、そしてエンタープライズ(企業)全体、さらに企業間のサプライチェーン全体というように、つながる対象を広げて、全体を最適化していくというアプローチです。従来とは異なる次元での新たな価値創出が実現していきます。そして最終的には、トヨタのウーブン・シティのように都市、つまり社会というレベルにも広げます。これらの実現のためには、一企業内のオペレーションにとどまらないつながり(コネクティッド)が必要です。

  

 例えばコンビナートで考えた場合、数十社が関わることになるので、コンビナート全体における効率的なオペレーションを行うことは容易ではありません。実現するためには、先ず、多種多様な機器をつなげて最適化していく「インテグレーションの力」が求められます。私たちはいろいろなプロジェクトで培ってきた経験とノウハウがあるので、このインテグレーションの部分から貢献していきます。

 

 また、私たちはPoC(概念実証)も積極的に進めていきます。例えば、ロボットやドローンなどの機器、テクノロジーを使ってプラントを点検する試みを行っています。とは言っても、横河電機がロボットやドローンを提供するのではありません。機器の一部を供給することもありますが、それぞれの機器が通信し、問題なく動くようにインテグレーションし、全体管理が遠隔で行えるようにします。つまり、つなぎ、動かし、全てを最適化すること、これらの部分においてコアコンピタンスを十分に発揮することができると思います。

 

 現場では、横河電機以外の機器も多く設置されています。他社製品も含めてエンジニアリングする、つまり他社製品も組み合わせてインテグレーションすることが必要です。提供価値としても高いです。インテグレーションの遂行能力を今後もさらに高めていきたいと思っています。

 

テクノロジーがビジネスを支えているというビジネス環境の中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)にはどのように取り組んでいますか。

 

 社内への「Internal DX」と、お客さまのビジネスをつなぐ「External DX」の二軸で、施策を推進しています。

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 「Internal DX」では、社員の生産性向上や環境への負荷低減のために、アプリケーションやグローバルレベルでのインフラの最適化を進めています。ほとんどの定型業務にRPA (Robotic Process Automation)を適用しましたし、データドリブン経営が弱かったところには、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを導入しました。デジタルの活用で商談を創り出す仕組みや、パートナー企業をサポートする仕組みについても、対応を加速させています。社内にテクノロジーを導入すると、それが使用事例となって商談の機会にもつながります。IoTAI、シミュレーションといったテクノロジーの導入を図っている甲府工場では、COVID-19の感染が拡大する中でも、多くのお客さまから見学について、お問い合わせをいただきました。

 

 「External DX」は自社でやっているDXをお客さまに提供し、お客さまのデジタル化を推進するDXであり、カスタマーエクスペリエンス(CX)、パートナーエクスペリエンス(PX)、そしてエコシステムが重要となります。

 

 現在、グローバルで約4万件のプロジェクトが動いており、それらのデータを活用することによって、生産性や安全性の向上などに貢献する例が実際に生まれています。お客さまに機密保持などの協定さえ結んでいただければ、データの収集と解析を支援し、生産性の向上や省エネなどお客様のプラントにおける課題を解決するだけでなく、理想とする操業を実現するためのソリューションを提供することができます。

 

 しかしながら、このような「External DX」は、横河電機だけでは実現できないことが多くあります。まして、全てを1社で担うという時代でもありません。例えば、セキュリティーなどITにおける対応能力レベルが高い企業と協力していくことが必要になります。地域ごとに強力な協業のパートナーを作り、デジタルツイン、DaaS、インダストリアルIoT Sensors、ロボティクス、ドローン、XRなど数々の技術を一緒に検討してきました。さまざまなパートナー企業の皆さんとともにイノベーションを推進し、co-innovationを発展させていくことを戦略として位置付けています。

 

 世界がグローバルとローカルに二極化していることもあり、地域ごとにパートナー企業と連携することを強化しています。例えば、その一国のみでサプライチェーンを構築し、ビジネスが行えるように進めている地域があります。地域ごとにサプライチェーンやパートナーシップを構築することは、時間と手間が非常にかかります。実現できるかどうかが、その地域においてビジネスができるかどうかの試金石になるとも言えます。私たちは長年にかけて、グローバルな体制の構築を行ってきました。日本の製造業がグローバルでビジネスを展開していくためには、より細やかな地域ごとのパートナー戦略がより重要になっていくと思います。

 

第3回へ続きます。

公開済

#01 横河電機が中期経営計画「Accelerate Growth 2023」に込めた思いとは?

#03 マーケットの視点でセグメント管理体系を刷新、人財戦略とМ&A・協業で事業を育てる

#04 思い切った組織機能の再編と社員の意欲を後押しする施策で、風通しの良い環境を作る

 

Date:2021.8

 

プロフィール

横河電機株式会社 代表取締役社長

奈良 寿(なら ひとし)

1985年横河北辰電機()(現横河電機)入社。主力の制御事業の営業部門で経験を積み、国内外の子会社の社長やライフサイエンス関連の新事業の立ち上げを経て、2019年から現職。本年5月に発表した新中期経営計画「Accelerate Growth 2023」では、独立したシステムが連携し単独では達成できない目的をシステム全体として創発的に実現するSystem of Systemsを、デジタル技術を用いてOTITの両面からリードし、さらなる企業価値向上と持続可能な社会の実現への貢献を目指す。

 

 

インタビュアー

株式会社プライアルトス 鈴木 眞由美

 

 

※本記事内の会社名、および役職は掲載当時のものです。

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