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#05 コロナ禍による環境変化をチャンスと捉え成長するための日本製造業の課題と向かうべき方向

  • インタビュー 2022年5月31日
  • 横河電機株式会社 代表取締役社長  
    奈良 寿氏
#05 コロナ禍による環境変化をチャンスと捉え成長するための日本製造業の課題と向かうべき方向

計測・制御機器メーカーの国内最大手である横河電機株式会社 代表取締役社長 奈良 寿(なら ひとし)氏に、COVID-19による大きな環境変化に対しての横河電機の取り組み等についてお伺いしました。

 

目次
  1. COVID-19による環境変化は、会社と会社とのパートナーシップのあり方を変える
  2. マーケットの声を取り込む製品設計と戦略的な人財の育成・登用で、日本の製造業は変わる

1. COVID-19による環境変化は、会社と会社とのパートナーシップのあり方を変える

COVID-19による環境変化を横河電機ではどう捉えていますか。

 

 COVID-19による事業環境変化は、あらゆる産業に大きな影響を及ぼしました。私たちも、さまざまな工夫や努力をしてその変化に対応していますが、この変化は新たな形でお客さまに貢献できるチャンスであるとも思っています。先述したとおり(本シリーズの#02を参照)COVID-19の感染が拡大するなかで安全を確保するために、リモート管理の必要性が高まりました。人の安全を高いレベルで確保しお客様の生産活動を継続すること、保全のための作業員をなるべく現場に出さずプラント操業を支えることが、これまで以上に重要になっています。

 

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 また、短期間でのシステムインテグレーション、急速なイノベーションスピードも、これまで以上に求められるようになっています。こうしたなかで、自分たちがやるべきところ、他社の力を活用するところをはっきりさせていくと、どのようなパートナーと一緒に取り組んでいくべきかが見えてきます。これが非常に大事だと考えています。

 

 これからは、ケース・バイ・ケース、プロジェクトによりパートナーとのフォーメーションが変わってきます。また、役割ごとにパートナーの選別が進み、「本当に組むべきパートナー企業と深くつながる」ようになります。企業はこれまで以上に自社の価値を明確に打ち出す必要に迫られることでしょう。こうした状況は、私たちにとってはチャンスです。コンピタンスで優位に立てる複雑な業務をアウトソーシングで受託するなどの機会が期待できます。

2. マーケットの声を取り込む製品設計と戦略的な人財の育成・登用で、日本の製造業は変わる

「日本のものづくりの力」が落ちているといわれることがあります。日本の製造業が将来に向けて強さを取り戻すためには、どのような課題に取り組むべきでしょうか。

 

 力のあるメーカーは、海外市場においても、機能性に無駄がなくそれでいて市場ニーズに適合した製品を投入しています。それぞれのマーケットからの気付きを、適切に製品に埋め込んでいる。差別化できる製品は、製品の企画・開発、製造、購入・利用、メンテナンスまでの工程を通して、LTVLife Time Value)を高める設計がされています。

 

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 それを実現するためのポイントの一つとしては、企業組織の壁や工程の分断を解消していくことではないかと思います。製品開発が企業内や組織でクローズしていると、市場にその価値を受け入れてもらえないことがあります。これまでの製造業のように開発、設計、生産などの分業が行き過ぎて、プロダクトアウトで製品開発を繰り返すビジネスをしていると生き残れません。工程が分かれていることでマーケットの期待が企画・開発に反映されないという状態を、まずは解消する必要があるでしょう。横河電機でも、開発段階から製造メンバーが参加するなどの体制で、製品の企画・開発と市場との距離を縮める工夫をしています。

 

未来を担う人財への対応については、どうお考えですか。

 

 技術の伝承の話がよく話題になりますが、人財は貴重な資産であり、当然のことながらその育成は企業の最優先の課題の一つです。期待されるアウトプットを出せるように、組織的な取り組みが必要です。将来の経営幹部候補や専門職となることが期待される社員を選抜してチャレンジングなポジションを任せ、育成していく制度も導入しています。

 

 どれほどデジタル化が進んでも、製造現場がなくなることはありませんので、現場での適応力を備えた人財を育成したり登用したりすることも重要です。現場を経験している人はやはり強いですから、経験してもらえる場を提供するようにしています。一例ですが、国内のコンビナートで2年間の実地研修をし、自社製品がどのように使われているかを社員に体感してもらうという取り組みも行っています。世界各地で何かしらの事業を創った経験のあるスタートアップ出身者も、困難な状況でも自力で何とかする力を備えていますのでそうした人財に活躍してもらえるようにするなどの取り組みにも可能性を感じます。

 

公開済み

#01 横河電機が中期経営計画「Accelerate Growth 2023」に込めた思いとは?

#02 多種多様な機器をつなげて最適化するインテグレーションの力が、SoSの世界観を後押しする

#03 マーケットの視点でセグメント管理体系を刷新、人財戦略とМ&A・協業で事業を育てる

#04 思い切った組織機能の再編と社員の意欲を後押しする施策で、風通しの良い環境を作る

 

Date:2021.8

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